モンムラサキクチバ(ヤガ科らしからぬ蛾)
モンムラサキクチバ(ヤガ科らしからぬ蛾)

モンムラサキクチバ 触角を前翅の上に乗せて止まっています。 撮影日:2013/05/06場所:勿来の関
ヤガ科らしからぬ例外的な止まり方をする蛾の紹介です。
この蛾の写真を見て,ヤガ科の蛾だと思いました。つい最近,セダカモクメを観察したばかりで,木目の筋が目立ちましたのでモクメキリガ亜科(キリガ類1)を調べました。でも,出ていないのでキリガ類を全て探しました。けれども見つかりません。
そこで,画像を拡大してみたところ,触角が前翅の上に乗っていました。
「えっ。まさかツトガ科かメイガ科の蛾だなんてありえない。」
と私は驚いてしまいました。ツトガ科とメイガ科の蛾はほとんど触角を前翅の上に乗せて止まる癖があることを発見していたからです。
でも,こんな茶褐色で二等辺三角形をした蛾はヤガ科の蛾で間違いないと思いましたが,念のためにツトガ科とメイガ科を調べました。予想したとおり見当たりません。もう,こんなときには行き当たりばったりですが,ヤガ科かシャクガ科を調べるのが一番よいと経験上分かっていますのでヤガ科から調べ始めることにしました。ヤガ科とシャクガ科が一番種類が多くて大変なのですが命中する確率が高いと思ったからです。前翅も後翅も開いて止まるシャクガ科に属する蛾とは思えなかったのでヤガ科から探すことにしたのです。
「四国産蛾類図鑑」のシタバガ亜科2Catocalinae(クチバ類1)から見つけ出しました。名前はモンムラサキクチバだと分かりました。

モンムラサキクチバ いつでも飛び立てるように触角を左右に伸ばしています。 撮影日:2013/05/07場所:勿来の関
名前が分かりほっとしたら,最初の疑問が頭の中に浮かんできました。それは,止まっているときの触角の位置です。私が写真を撮った蛾は偶々触角を上にして止まったのか「みんなで作る日本産蛾類図鑑」に出ているモンムラサキクチバの写真を再び見てみました。すると同じように触角を前翅に乗せて止まっているものもいるし左右に伸ばしているものもいました。同じような写真があり安心しましたが,外のWeb図鑑も調べました。やはり,2つの型がありました。
念には念を押して,透明のビニル袋に採集してきたモンムラサキクチバの触角の位置を朝も昼も夕も観察しました。観察する前には必ず,袋を動かしてモンムラサキクチバを羽ばたかせてしばらくしてから触角の位置を見ました。
すると,いつ見ても触角の位置は前翅の上にありました。
更に,袋から出したら触角の位置はどうなるか,17時30分頃実験をしました。
窓のカーテンを八分目まで閉めカーテンの開いている明るい方に向かってビニル袋を開けました。蛾は明るい方に向かって飛んでいきレールを乗せる木の枠の上に止まりました。そのときの触角は2枚目の写真から分かるように左右に伸ばしていました。その後,夕御飯のため2時間ほどその場を離れていました。戻ってみると元いた場所から少し移動してガラス窓のアルミサッシ枠に止まっていました。そのときの触角の位置は3枚目の写真のように体の上に乗っていました。

モンムラサキクチバ 落ち着いたのか触角は体の上に乗っています。 撮影日:2013/05/07場所:勿来の関
このことから触角の位置がそうなるのは,偶然ではなく,この蛾の習性なのだと分かりました。
このとき,もしかしてシタバ類の蛾はこのモンムラサキクチバのように触角を乗せる習性があるのかも知れないと思いました。すかさず調べましたが,モンムラサキクチバ・モンシロムラサキクチバ・シラホシモクメクチバの3種類にしかこのような習性は無いことが分かりました。
今までヤガ科の蛾は必ず止まるときには触角を前翅の上には乗せないと思っていましたが,例外もあることを知りました。
どんな世界でも必ず例外が見られるのが,自然界の姿なのでしょう。
実は,これと同じことをシャクガ科の蛾でも観察していますので,近いうちに紹介します。
五七五
例外は 必ずあると 思い知る
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